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セールスイネーブルメントとは? 注目の背景やメリット、実践のポイントを解説

2023.04.25

顧客のニーズが多様化するなか、多くの企業の営業部門には「売れるためにはどうすればいいか?」という課題が突き付けられています。しかし労働人口の減少や営業プロセス・ナレッジの属人化などの影響により、“根性”“気合い”の営業活動は限界を迎えているのが現状です。

このような事情がある中、近年注目されているのが「セールスイネーブルメント」という考え方です。

本記事ではセールスイネーブルメントの概要や注目される背景、メリットを分かりやすく解説。組織全体の営業力を高めたいと考えるなら、ぜひ参考にしてみてください。

セールスイネーブルメントとは? わかりやすく解説

セールスイネーブルメントとは『営業活動を行うチームの強化・改善のための取り組み』を指します。

もともとアメリカで生まれた営業施策であり、営業活動を強化・改善することで売上アップ、生産性アップを目指します。

その目的は「営業部のだれもが売れる仕組み=商談に勝つ定石を作るため」であり、売れるための仕組みを作って長期的な利益を得ること、および営業活動を持続させることが最終目標なのです。

従来型の営業活動は“分散型”“属人型”

営業活動というと「架電してアポイントを取る」「顧客先訪問をして提案をする」などがありますが、これはあくまでも「行動」。営業活動の行動に至るまでには、教育、営業ツールの導入や開発、営業プロセスの設計や改善などが必要です。
しかしこれらはバラバラの部署で行われるケースも多く、各部署が上手く連携できないと成果も上がりにくいという難点がありました。

また、営業部門内に注目してみても、さまざまな問題を抱えるケースが少なくありません。

・営業部門で教育を行っても、教える人によって育成後の成長に個人差が出る
・優れた知識やプロセスがあっても共有されにくい
・営業部門と他の部門で情報共有がうまくいかず、売上を伸ばすための具体的施策がなかなか出ない
・マーケティング施策でリードを獲得していても営業が対応できず取りこぼしてしまう
・営業ツール(カタログやパンフレット)が実際の営業活動にフィットしない
・実際の顧客層とマーケティング部門が狙っている顧客層に齟齬がある

これらの問題は各部門がバラバラに動いていると起こりやすくなります。
また、他部門が頑張っていても営業チームのスキルや経験が育っていなければ、効果的な営業活動はできません。

セールスイネーブルメントを行い、組織全体の連携を強化できれば、受注数アップにつながります。また一時的な業績アップだけではなく、データ共有の強化によって営業そのものが“仕組み化”されることで、長期的に売れる企業へと成長できるでしょう。

セールスイネーブルメントを構成する要素

セールスイネーブルメントは「この施策をやるだけで売上が上がる」といった、単純なものではありません。
組織ぐるみで次のような“営業活動の支援”を行うことで、”売れる仕組み”を構築していきます。

1.顧客に応じた「営業プロセス」の見直し、再構築
2.テクノロジーを活用したプラットフォーム(CRMなど)の導入、効率化
3.組織の分業と連携による営業力強化
4.管理職のマネジメント強化
5.トレーニング、ラーニング
6.ナレッジ(優れた人材の営業プロセスや資料など)の整備、共有

セールスイネーブルメントを行うには営業部門のみならず、マーケティング部門や人事部門などさまざまな部門のかかわりが欠かせません。

また、CRM(顧客管理システム)やSFA(営業支援ツール)などの活用によって営業活動の効率化を進めることも重要です。

営業トレーニングなどの「人材育成」との違い

セールスイネーブルメントを取り入れていない企業においては、「人材育成」によって従業員の成長、スキルアップをはかるための対策を行っています。

人材育成とセールスイネーブルメントはよく混同されますが、実際には「対象者」「実施方法」のそれぞれが異なります。

セールスイネーブルメントにおいても人材育成を行う機会は多いですが、それはあくまでも施策の一部にすぎません。また人材育成による営業力強化は、個人単位で行われるため、業務や営業手法が“属人化”しやすいのもネックです。

セールスイネーブルメントで包括的な営業支援をしつつ、組織全体の“最適化”を行えば、属人化も起こりにくくなります。結果として組織全体の営業力が底上げますし、理想的な人材育成が実現します。

セールスイネーブルメントが注目される背景は?

セールスイネーブルメントについてご説明してきましたが、ここで改めて注目される背景を見てみましょう。

結論から言うと、セールスイネーブルメントが注目される理由は「少子高齢化」「顧客ニーズの細分化」です。

日本では少子高齢化により就労人口が減少し続けています。特にマネジメントクラス(40-55歳)の就労人口は今後20年で3割減るとも言われており、1人あたりに換算すると25%以上生産性を高めないと経済は衰退してしまうとの意見もあるくらい深刻な状況です。

とはいえ営業活動の業務量はいまだ減らず、属人化などの問題も未だ残っています。人手不足ゆえ、根性で乗り切ったり、小手先の効率化をはかったりしたとしても改善は難しいでしょう。

また、顧客の需要も細分化・複雑化していて、“売上を出す施策”を打ち出しにくくなっている現状もあります。

そこで注目されるのが「セールスイネーブルメント」です。

「とにかく人手を割いて場当たり的に営業をかける」「優秀な人材頼りで営業活動を行う」といった旧型の営業活動には、もはや持続性は見込めません。

その代わりにセールスイネーブルメントによって「組織全体」で営業活動を行い、どんどん強化していって優秀な人材が生まれるような仕組みにしてしまうのです。「優秀な営業社員がたくさんいて、後続も成長しやすい環境を作る」と考えるとわかりやすいでしょう。

セールスイネーブルメントの導入にはさまざまな改革が必要になるため、はじめは負担に感じるケースもあるでしょう。しかしいったん売れる仕組みを作ってしまえば、その後は効率的に営業活動が続けられます。

セールスイネーブルメントのメリット

セールスイネーブルメントを行うメリットは次の3つです。

営業プロセスの属人化を防ぎ、ノウハウを仕組み化できる

営業改善の施策を仕組み化してしまえば、「○○への営業は△△さんでないと難しい」といった属人化を防ぐことができます。

セールスイネーブルメントによって優れた営業社員の行動パターンや営業ノウハウ、ナレッジなどをマニュアル化しておけば、営業チーム全体が“優れた人材”へと成長することもできるでしょう。
もちろんこれは既存社員だけでなく、次に入社してくる人材においても同じです。長期的に見れば質の高い社員を育成しやすくなります。

営業&マーケティング部門の連携力が高まる

またセールスイネーブルメントには、マーケティング部門との連携力が高まるメリットもあります。

マーケティング部門が有用なデータを持っていても、営業部門との連携がうまくいかなければ意味がありません。
しかしセールスイネーブルメントを行い、各部門で活発な情報・データが共有されるようになれば、「マーケティング部門の情報収集→営業→結果分析→営業活動への活用」といったサイクルが生まれます。
マーケティングの成果が営業活動へ最大限活かされれば、業績アップにもつながるでしょう。

成果が数値化され、分析・改善しやすくなる

さらにその他のメリットとしては、施策や効果の検証がしやすくなる点も挙げられます。

従来型の営業活動では、「顧客へどうアプローチしているか」「業績にどのくらい貢献しているか」といった結果が目に見えにくいのが難点でした。

しかしセールスイネーブルメントの施策としてこれらを“数値化”できれば、定量分析や担当者の評価がしやすくなります。数値化することで具体的な改善案も出しやすくなるほか、営業社員のはたらきを適切に評価しやすくなるため、不公平感のない人事評価が実現します。
結果的に営業社員のモチベーションアップにもつながり、さらなる組織力の強化が期待できるでしょう。

セールスイネーブルメントを実践する際のポイントは?

セールスイネーブルメントを実践するにあたって重要なことは以下の5つです。

・営業部門はCRMツール、SFAツールの導入と活用でデータを蓄積していく
・営業ノウハウやナレッジの共有、マニュアル化
・営業の“貢献度”“施策の効果”を明文化する
・営業社員の行動、能力を数値化し、評価に反映させる
・セールスイネーブルメント専門の部署を置く

セールスイネーブルメントでは、各部署・部門で情報共有をすることが重要視されています。

そのため営業部門では、CRMツールやSFAツールを導入し、顧客の情報や購買プロセス、営業活動のデータを蓄積していく必要があるでしょう。

また営業に関するノウハウ・プロセス・ナレッジは全て資料化し、マニュアルとして共有していくことも重要です。これによりすべての営業社員が「質の高い営業活動」を行えるようになります。

さらには、各情報を明文化、数値化することも重要です。
たとえば「営業社員の貢献度」「施策の効果」などは、数値や文章などで明文化することで次の施策改善に活かしやすくなります。
また社員の行動や能力といった“目には見えにくい情報”も数値化することで、正しい評価が付けられます。当人のモチベーションアップになるだけでなく、再教育やマネジメント効率の向上にもつながるでしょう。

なお、これらの施策をスムーズに行うには、セールスイネーブルメント専門の部署や担当者を置くのもひとつの方法です。各部門から1名ずつ選出するなど、連携しやすい形でチームを設けると効率的にセールスイネーブルメントが実行できるでしょう。

「営業力がいまいち」という問題がある企業においては、営業部門以外との連携力が足りなかったり、そもそも効率的な営業活動ができていなかったりするなどの問題が潜んでいることも多いもの。
組織全体の営業力を高めたいならば、ぜひセールスイネーブルメントを取り入れ、実践してみてください。

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